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恋に恋する妖精【7】:ただ、恋がしたかっただけなのに(小話回)

2026/01/19

*連続ロマンチスト願望達成の続きです。相変わらず論理感はありません。

*妻帯者には手を出していません(唯一の理性)。

*男性デフォシムとのBL表現も引き続きございます。

シムの死亡描写あり

ケネスの悲しみ


(空に浮かぶ雲を何かに例える君は、なんだか幼く見えてかわいらしかった)


(今までは少し面倒だった庭の手入れも、君が来てからは楽しい時間に変わっていた。また一緒に手入れしたかったな。なんで俺は妖精の粉を撒いちゃったんだろう)


(抱きしめる度、君の体が意外と逞しいことを俺だけが知っているなら良いのにって思った……君が前の恋人をどんな抱き方をしたのか、気になって仕方なかった……言えば良かったのかな)


(なんて。どれもこれも、きっともう手遅れなんだ。だって君は俺を置いて去っていってしまったから)


ケネス「うっうう……っ全然涙が止まらない!!なんで悲しい感情も、君の付けた痛みの記憶も魔法で消えないんだ!!キアラン!俺に人魚の魔法をかけただろう!?」


いいえ、忠実なシムをお前が傷付けたせいです。

妖精の魔法もどうやらケネスが負った心の傷は治せない模様。
そもそもキアランが自分の苦しみをケネスに教えるために、慣れない真似をして付けたメモリーを当然のように消そうとするんじゃありませんよ。
しっかりと悲しみの理由を考えてください。



ケネス(辛い時はヨガだって父さんが言っていたっけ。ヨガ、あまりやらなかったな……ああ、記憶を消したり感情を瓶に詰めたらお腹すいちゃった……でも今はなんだか誘惑的な感情を浴びたくない、後にしよう)

恋人たちや気分屋の低木から誘惑的な感情ばかり貰っていたケネス。
家にある瓶詰めの感情は彼の好物である誘惑的な感情の詰まった桃色の瓶ばかり。力を使い過ぎて飢えてきましたが、今は大好きな恋の感情を味わう気分になれませんでした。



『僕たちのかわいい子。よく聞いて覚えておいて。妖精の力を使うときは先のことを考えてから使うんだよ。強い力には強い責任が伴うんだ。じゃないと───』

(そう言えばあの時、母さんは最後になんて言ったんだろう)


ケネス「ああ……頭がぼんやりする。なんで急に昔のことなんか思い出したんだろう。お説教ばかりの母さんの話なんて覚えている訳がないのに!」

感情の飢えを放置し過ぎたからでしょうか。
ケネスの頭上にオレンジのモヤが現れ始めました。随分長いことヨガの練習をしていた気がします。ですが、キアランはまったく帰って来る気配がありません。
妖精の自分と違い、食事が必要な人魚はきっと帰ってくる筈。そう思いこんで待っていたケネスは待ちぼうけを食らうことになりました。



キアラン(本当に不思議な湖だ……泳いでいるだけで満たされる気がする……湖にかかった魔法の力なんでしょうか)

キアランはケネスの待つ家に帰らず、ずっとエヴァーテューの湖に居ました。
湖に浸かっていると、全ての欲求が満たされていくのでどれだけ泳いでも疲れませんし、お腹が空くこともないのです。

記事を書いていて思い出したのですが、そう言えばキアランは色々とトレーニングに便利なスキルマスター得点を持っていました。全然欲求が減らないので、不思議に思っていたんですよ。湖の中にいる間、トレーニング判定を受けて欲求が減らなかったのかもしれません。



ケネス「……うぅ。キアラン……っキアラン!……なんで、まだ帰ってこないの……どこにいるの?」

帰ってこない恋人に焦れ、ケネスが家の外に妖精の羽で飛びだした時。ついにケネスの感情が完全に枯渇してしまいました。




ケネス(あ、ああ……すぐそばに妖精の家があるのに……もう、小さくなることもできないっ!)


ケネス「っやだ……!!まだ、しにたく、ない……ぼくは、俺は」

体を覆っていた光がひときわ強く輝いた後、ケネスの体は闇に包まれ地面に倒れていきました。


ケネス「まだ…あい……され、て……ない」



その可哀そうな妖精は、最初から哀れな存在ではなかったのです。

両親のように互いを認め合う素敵な恋に憧れていました。
だけど自分がもっとも惹かれるシムという存在が分かりませんでした。
それでも恋がしかったのです。恋に憧れていたのです。

体だけでなく歪な心も抱きしめて、受け入れて欲しかったのです。









様々なシムと付き合えば見つかるかもしれないと、手当たり次第に声をかけていました。
次第に、魅力的な感情をくれるシムを渡り歩く行為自体に夢中になっていました。

自分が何をしたかったのか、目的が曖昧になっていくのを気付かなかった訳ではありません。

ですが気付いた頃にはもう、自分を好きになってくれるシムを探すことが止められなくなっていたのです。

止めてしまったら、自分は独りぼっちになってしまう。
漠然とした不安が論理感のない行動に拍車をかけていました。



死神「哀れだが、使い古された陳腐な話でしかない……寝床を共にする相手に困らぬ身だというの命乞いに来る者も無く、最期を迎えるのは独り冷たい泥の上とは。これもまた典型例だ」

ケネスのポケットにはいつも死の花がありました。恋人を死神に渡すことがないよう、備えていたのです。でも、ケネス自身が死の前にいる今、傍には誰も居ません。
誰も彼の命乞いに来てくれないのです。


死神「冥界に旅立てば重くなった羽も軽くなることだろうが、遺恨は残され新たな悲しみを呼ぶだろう。妖精よ、“次”の選択を誤れば永劫に後悔することを努々忘れるな……」



キアラン「うわあああっ!!ケネスさん!ケネスさん!!!なぜですか……僕があんな、あのような酷い真似をしたせいですか?!まさか死んでしまうなんて……僕が彼を殺してしまったんだ……!!」

湖から戻ったキアランがケネスの家に戻った時、まず目に入ったのは緑に彩られた美しい墓石でした。
おそるおそる確信めいた不安を抱きつつ、墓標を確認した彼の心を襲ったのは激しい後悔と喪失の悲しみです。後悔も涙も遅いと分かりつつも泣いて、叫ばねば体が裂けてしまいそうな強い感情に身を任せていました。



ケネス「なに不穏なこと叫んでるのさキアラン。いやーお腹すき過ぎて死ぬかと思ったよ。ってもう死んでるけどね!ほら、ここ笑うとこだよ?」

転生もせず、自我も失わず、ゴーストとして住み慣れた家に残ることを選び、全身から妖精の粉をこれでもかと叩き落として感情を満たしたケネスには冗談を言うくらいには余裕がありました。
ただあまりに不謹慎が過ぎて滑っています。笑えるのは言った本人だけです。鬱陶しいシムですらドン引くことでしょう。


キアラン「っ!?脅かさないで、くださいよ……」
ケネス「……ごめんね?君がどんな反応をするのか見てた」


ケネス「俺さ、君を凄く傷つけていたんだね。君だけじゃなくて……俺が……ええと」
キアラン「いいんです。ケネスさん、僕は知ってるいたんです……貴方に僕以外の恋人がいることを。だからといって試すような真似をしてしまった不義理について、謝罪をしても良いでしょうか?」

どう伝えれば相手を傷付けないか、ケネスは生まれて初めて言葉を選んだ気がしました。そこまで言葉を選ばなくても楽な人生を歩んでいた気すらします。


ケネス「君さぁ真面目過ぎ!!許すに決まっているじゃん。俺の方こそ謝らないといけないのに!」

自分の言葉を遮られ、逆に丁寧な謝罪を告げるキアランに飽きれすらしました。なんだってこのシムは真面目なんでしょう。
許されないといけないのは自分なのに、逆に許す側になるなんてチグハグじゃないですか。


キアラン「ふふ、よく言われます」

いつだったか似たようなやり取りをした気がしました。
もし違うシムとの会話だった場合、口に出したらこの幸せな時間が凍るだろうことは流石のケネスも察せたのです。苦い記憶が幸せな記憶に上書きされ、胸を占めていた悲しみは嘘のように消えていました。


ケネス「俺が君以外の恋人を断ったら、また恋人になって欲しいってお願いしても良い?」
キアラン「い、いいんですか?貴方は必要だから僕以外の恋人を持っていたのでしょう」
ケネス「もういいんだ。だって一番欲しい人が見つかったんだもの!」

(俺を試すくらい好きだなんて、なんて可哀想で可愛いシムなんだろう!きっと俺が欲しかった恋は君なんだよキアラン!!)

ケネスはキアランを含む全ての恋人たちと関係こそ消えていますが、ピンクバーは残ったままです。全ての恋人との関係を清算すると断言した以上、しっかり清算しないとこの遊び人は何をしでかすか分かりません。
こやつは謝罪に「メンゴ」などと言うような薄っぺらい不審なシムですから。


次回、関係清算回です。好きなシムとの関係を消したくないプレイヤーが駄々を捏ねまくると思いますが、お付き合い頂けますと幸いです。