「エコ☆エコエイリアン」、「潔癖症の吸血鬼、転生する」のスピンオフです。
※ 当シリーズにはWerewolves GPのネタバレと、極大解釈が含まれます。
ネタバレ祭りにつき、一応のワンクッション
このシリーズはWerewolves GP出典の魔法使いと吸血鬼の歴史に関する情報を元に、筆者が妄想を膨らませた結果、生まれた話です。
知識がある前提で話を書いているため、ゲーム内で原典を読むかネットで調べた後の閲覧を推奨します。→(maru様がまとめた記事がございます)
また、既に自論を持つ有識者の方も、「そういう解釈があっても良いんじゃない?」と温かく寛大な目で見守って頂けますと幸いです。
時系列をまとめるのが苦手なため、もしかすると話が前後しているかもしれません。
(なお、スケルトン化の魔法はMod由来の設定です)
今は昔、知る者の限られた世界の話
昔々、吸血鬼の反旗で魔法使いが滅びかけていた時代。
魔法使いだけが住む小さな集落がありました。
吸血鬼の襲撃を警戒しつつも日々の幸せを望む、穏やかな性格をしたシムが集まった長閑な村でした。
「カウプラントを村の防衛に使えないか?」と提案したのは誰だったのでしょう。
防衛用のカウプラントを調教していたシムは、守るべき住人が逆に食べられやしないかと常に緊張に顔を歪ませていました。
他の村から度々悲報を受けることはあれど、住民は常に怯えていた訳ではありません。
噴水がシンボルの広場で、旦那の愚痴や子どもの成長の早さを語り合う姿もありました。
外に出れば魔法以外の知識も必要になるでしょう。
村の講堂では若い魔法使い達に向けて、大人たちが生活に必要な知識を授けていました。
もちろん魔法使いらしい訓練だって受けています。
便利な錬金薬の作り方も覚えるため、ずっと鍋をかき回したり
呪文の唱え方と、杖を振り方を何度も身に馴染ませる訓練も受けていました。
未来を担う若い魔法使いたち
黒髪の魔法使いの名はサンダー。
家族と読書を愛する、物静かで慈愛に溢れる青年でした。
茶髪の魔法使いはミスト。
運動と冒険を好み、苛烈で情に厚い青年です。
サンダーとミストは互いに「名前を交換した方がいい」とジョークのネタにし合うほど仲の良い親友であり、そして魔法使いとしての技術を競い合うライバルでもありました。
『もうサンダーも成人ですか……急いで大人になろうとしていませんか?貴方はまだ子どものままでも良いんですよ』
『何を言ってるの父さん。村を守る人手が足りないってぼやいていたの聞いたよ。僕だって皆を守りたいんだ』
『確かにそうは言いましてもね……』
『モニカ、お椅子に座ろうな~おいしいご飯の時間だぞ~』
『僕だって急いで成長したいとは思ったけど、シムに訪れる時間は平等なんだから。息子が一人前に育ったんだってお祝いしてよ』
優しい父と少し厳しい母、そして年の離れた可愛い妹……。
生まれ育った、暖かくこじんまりした家。その中にあるもの全てがサンダーの大事な宝物です。
(この幸せを奪われないためなら……僕だって吸血鬼と戦ってやる!)
宝物を守りたい──それが大人しく、怒るのが下手な彼が戦うために杖を掴む動機でした。
今後、自分の宝を守るために他者の宝を奪う戦いに挑む日が訪れるかもしれない。そう理解した上でシム相手に攻撃的な魔法を向ける練習も積んでいました。
家族が寝た後、ランタンの薄明かりを頼りに彼が勉強をしていた夜更けのことです。
コツンカツンと窓ガラスに何か、軽い物の当たる音が聞こえました。
『……ミストか』
隣に住む親友は時々、同じ方法で夜の秘密の会話に誘ってきていました。
主にサンダーが夜更かしして勉強をすると窓に物が投げられるのです。
『なんだよ。君も明日から仕事が割り振られるんだろう?予習をしたらどうだい?』
『はぁ~それは俺の台詞だよ。俺たちは明日から仕事があるんだ。お前も早く寝ろよ』
窓を開けると寝間着姿の幼馴染が、普段着を脱いでもいないミストを見て呆れたように肩を竦めてみせました。
『詳細は話せねぇけど俺は明日、ムーンウッドミルに居るグレッグ師匠から召集を受けたんだ。なんでも原始流派に長けた魔法使いの手が必要らしい』
『君も村を離れるのか……守りが薄くならないか心配だな。僕は吸血鬼の襲撃に遭った村の修復作業に呼ばれたよ』
お互いの家族を起こさないように声を潜め、窓越しに会話をするのは日常の一部であり、そして二人だけの特別な会話でした。
明日の朝に話せば良い話も、夜に話すと二人だけの秘密を共有しているような不思議な高揚感をもたらせていました。
『それで……ええ~~っと……いや。帰ってきたらで良いか……お互い、村に帰ってきたらよ。話したいことがあるんだ』
『っふふ、なんだそれ。分かった。帰ってきたら真っ直ぐ君の家に行く。短気を起こして留守は止めてくれよ?』
なにごとも即決即答な親友にしては珍しく歯切れの悪い約束に、サンダーは笑ってしまいました。
『そんなに笑うことないだろ……お前こそ俺をあまり待たすなよな。あまり待たすと……いや。いつまでも待つから絶対、ぜっっったいに帰ってこいよ?』
『当たり前だろう。僕は君と違うんだ。約束は絶対に守るさ。君こそ絶対に帰って来てくれよ』
親友との約束を守れない日が来るなんて、二人は疑ったこともありませんでした。
ですが「必ず生きて帰ってこい」と口にしたら不安が本当になるような予感から、代わりに再会の約束を念入りに交わし、静かに窓を閉じたのでした。
『村の守りを頼むよ……ジョアン、どうしたの?』
『お前……よくカウプラントを撫でられるな?怖いもの知らずだったりする?』
朝日が昇りきる前。サンダーは同じ村に住む若者であるジョアンと村の堺に居ました。
初めて与えられた仕事を終わらせるためです。
『カウプラントは餌さえあげれば無害なんだ。それに、村の護衛に置かれている奴らは調教もされているからね……これ、植物学の授業で聞いた話だよ?』
『なにそれ知らん。俺、寝てたかも』
『……座学を真面目に受けない生徒も達人の認定受けられるなんて、ずるくない?』
二人は吸血鬼を警戒しつつ自分の生まれ育った村を後にしました。
世界が裂けた日
『サンダー……おかしくないか?!この道で合っている筈だよな?』
『うん。合っているはず……さっき感じた異様な魔法の力……まさか、何かこの世界に異常が起きてる?』
この日。
全ての吸血鬼達を治療するため、ある魔法使いの集団が放った魔法が魔法の世界を砕きました。
吸血鬼の呪いは解かれることなく、魔法の国はグリマーブルックと隔てられる悲しい結果に終わりました。
偶然グリマーブルックに訪れていた二人の魔法使いは村に帰ることもできず、夕暮れの闇が迫る気配に慌て、近くの民家に軒下を借りようと駆け込みました。
厩の藁の中で「明日、また道を探そう」そう互いを励まし合って眠りましたが、決して道は見つかりませんでした。
全ては終わった話
「…………ん?ああ、夢でしたか」
どうやら新しく買った本があまりに面白くなかったらしく、ミタは眠っていたようです。
スケルトンの体に変わったことで諸々の欲求から解放されましたが、退屈が過ぎると眠ってしまう機能だけは残っていたのでしょう。
(昔の夢なんて、いつぶりでしょうね……。あの後が本当に……ああ、ジョアン。貴方の仇は討ちましたよ……報告しようにも墓がないなんて、酷い話です)
魔法の国が消えた後。
サンダーの耳にはウェアウルフという未知の存在と、その悪評が届くようになりました。
そして吸血鬼が洗練された存在だという話も。
自分たち魔法使いを滅ぼそうとし、シムの生き血を求める吸血鬼達が洗練された存在だなんて!
魔法の国に帰る手段を探し、方々を旅するサンダーもジョアンは互いに酷いデマだと呆れていましたが、どうやら他のシム達は疑ってもいないようです。
二人は吸血鬼を倒すための魔法も教わっていました。
ですが、それは複数人で一体の吸血鬼を相手にした時だけの話。
達人に成りたての、たった二人の魔法使いが複数人の吸血鬼を相手にするための技術なんて教わっていません。
夜闇から襲撃に遭った時の対処法なんて「夜は外に出るな」以外の知識しか知りませんでした。
『ハァ、ハァ……っくそ。ジョアンを、助けに……いや、そのためには僕が生きてないと……』
ジョアンは吸血鬼に驚かされた時、自分の足に引っかかって倒れ、強かに頭を打ったようです。
サンダーはすぐに走り出したため、相方が倒れた時に出した呻き声から、更に最悪な状況を想定して思考を巡らせていました。
『おいお~いwやることブッレブレですよ~wwそれで?何から手を付ける気なんですか~ww』
『う、うわぁ~~~!!!』
『チャーリー。遊ぶな。その魔法使いがどの程度の力量なのか分からないだろう』
『クソ真面目かよwビルは黙ってもう一人の魔法使いを捕まえてくださ~いww』
(さ、さらにもう一人!!……僕の力量じゃどうにもできない……)
(……いや諦めないぞ!僕は、絶対に生きて帰らないといけなんだ!!)
サンダーはまだミストと交わした約束を覚えていました。その約束が、生き残るための道標となったかのようにある呪文を思い出させたのです。
呪文を唱えるサンダーを、二人の吸血鬼は興味深そうに眺めていました。
魔法使いを狩りなれていたこの吸血鬼達は、あえて魔法を使わせていたのです。
トランステレポートで逃げるなら、その先に霧となって現れてやろう。とでも考えていたのでしょう。
『さて。この体でも貴方達は血が吸えるのですか?試す強者は?』
シムをスケルトン化させる魔法は、古代オミスカ神話から取り入れた呪文です。
本来は他のシムを呪う呪文でしたが、サンダーは自分をスケルトン化の呪文で呪うことで吸血鬼達の持つ吸血欲求から自分を遠ざることにしました。
『ギャハハハハッwwなんだこいつwwwイカレてんのかよwwww』
『なるほど考えたな。少しも食欲が湧かん』
『感想ありがとうございます。意外と丁寧なお方ですね』
その丁寧な吸血鬼は次の瞬間、骸骨と化したサンダーの首に手刀を落とし崩れた体を担ぎ上げました。
『変わった魔法使いを見つけられたな。マスターもお喜びになる筈だ』
『どーかんwそれで?もう一人は?ww』
『お前が持っていくに決まっているだろう。何を楽しようとしてんだ』
こうして二人の吸血鬼に、主への貢ぎ物としてサンダーとジョアンは捕まりました。
この日、この牢獄の中で。
怒ることも、恨むこともなかった温厚な魔法使いが、ひとつの吸血鬼の一族を根絶やしにする程の激しい憤怒を抱くようになります。
ですが、それもまだ誰も知らない話です……。
『ふふ、気持ちいいですか?そうですか。貴方は愛らしいですねぇ。アート、わたくしの散歩に付き合ってくださいますか?昔のことを思い出して……少し、気分が悪くなりました』
(結局、村に帰れないまま本来のシムであれば考えられない時間を生きてしまった……もうミストは生きていないだろう。皆は元気だろうか……)
ミタさんはイザヤが家を出た後、小屋を勝手に大改装しています。地下に住み続ける意味がありませんからね。
散歩の途中、道端に濡れた犬のような匂いを纏うシムが蹲っていました。
面倒事はごめんだと散歩のルートを変えようとした時です。
『……サンダー』
おそらく独り言だろう声量のその声は、かつて聞いた声と比べようもない程低く、そして奈落を覗いたかのように暗い音を纏っていました。
ですが、昔の夢を見たばかりの脳は確かにそれが知っている声だと判断し、黙るための唇がない口をスルっと滑らせたのです。
『まさか、ミスト……なのですか?』
あの過去の夢は、離別から百年以上の年月が経つ親友との再会の予感が見せたのでしょうか。
幸福を求めることも諦めた魔法使い達は、こうして再会を果たしました。

















































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